ポータルサイトブログその金額で本当に大丈夫?ポータルサイト制作費用の見積もり相場
はじめに
ポータルサイトを作ろうと考えた時、どのくらいの費用でできるのかは誰もが気になるポイントです。
初めてホームページ制作会社に依頼したりする場合などは特に、見積もりを出してもらっても適性な価格なのか判断が難しいと思います。
正直なところ同じ内容のサイトを作る場合でも、ホームページ制作会社によって100万円だったり500万円だったりと金額がぜんぜん違うことがあります。言い換えると同じ金額300万円で依頼しても全く違うものが納品されることが普通に起こり得ます。
では何故そうなるのか。
高い金額を出すところはボッタくっているのではないか。
そう不安になるかもしれません。
中には悪質な業者もいて、世間の相場とかけ離れた金額を提示してくる場合もありますが、多くのホームページ制作会社はそれなりの理由があって価格設定をしているので、何が料金に含まれているのかを見極める必要があります。
目次
基本的な見積もりの算出方法
通常、制作に関する商品の費用は「材料費、人件費、経費」で決まりますが、御存知の通りWebに関してはほとんどがデザインを作成したりコードを書くことで完成するので、「材料費」はほぼゼロになります。
つまり大半が「人件費」と「経費」です。
そこでIT業界でよく聞くのは「人工(にんく)」という言葉です。別の言い方で「人日(にんじつ)」ともいいますが、「1人が1日でできる作業」といった感じの意味です。「人月(にんげつ)」になると、「1人が1ヶ月でできる作業」になります。
※人月商売は問題もありますがそれに関しては今回割愛、納期とはまたすこし違うのでご注意ください
人日(1日あたり)だとイメージしづらいので、例として人月(1ヶ月あたり)で考えてみましょう。
100万円/人月(1人が1ヶ月でできる内容で100万円)
ここで月100万円を高いと感じるでしょうか。
「1ヶ月でできる作業で100万円ということは、月給100万円だろ!高すぎる!」
と言うのは早計です。
100万円に何が含まれるかを解いていくと、ざっくり以下のような内容になります。
- 給料(+会社負担の法定福利費など)
- 業務に必要な道具(PCやソフトウェア)
- 事務所維持費(家賃光熱費)
- 利益
会計の知識はあまりないので、他の記事から引用させていただきますが
限界利益(粗利)に対する人件費の目安は40%以下だそうです。
そうすると、100万円/人月(材料費がないのでそのまま限界利益として考える)とすると、適性な人件費は40万円以下。福利厚生などのバランスにもよりますが、実際に給料として受け取れるのは20~30万程度になるでしょう。
わかりやすいように100万円/人月で例を出してみましたが、決して高すぎる金額ではないと思います。
あとはその社員の技術など能力によって給与も変わってきますので、新人であれば50万円/人月、マネージャークラスであれば200万円/人月と単価も変わってきます。
さすがに見積もり時に「新人を付けるので安くします」と言うことは少ないと思いますが、この技術の開発でしたら「50万円/人月」難しい開発なので「100万円/人月」になります、と単価で見積もりをだす会社はあるでしょう。
1人月かかる内容と見積もったら、担当する社員をみて「100万円」と金額だけをだす会社もあります。
実際にはさらに需要と供給のバランスにより、開発にかかる期間とは関係なく金額を提示されることもあります。
習得が難しい専門技術や知識が必要な場合は、一瞬で終わる開発に高い費用がかかることもありますが、「長い習得期間と短い開発期間」が必要なわけですので、作る側からすると安いくらいの作業も多くありますね。
以前放送していたビートたけしさんと劇団ひとりさん出演の『ワンダ 極「80年と10分」編』のCMがいい感じで伝えてくれてます
見積もりの相場
前置きが長くなりましたが、ポータルサイトを制作する場合の見積もりの相場について。
一例として下記のような項目がありますが、当然ながら項目や金額は開発規模によってまったく違うので、その都度見積もってもらわないと正しい金額はわかりません。考え方の参考程度にご覧ください。
見積もり項目例
ディレクション
ディレクター及びディレクションに関わるスタッフ
打ち合わせから要件定義などサイト開発の計画や進行に関する部分です。
制作が長期にわたる場合は自然と金額が高くなります。
デザイン制作
主に見た目のデザインに関する部分。
サイト全体に影響し、表示する要素が多いトップページが一番料金が高くなる傾向があります。
フロントエンド(HTML+CSS+JavaScript)
デザインをWebサイトとして表示・動作するようにコードに落とし込む作業です。
バックエンドとの連動やスマホで表示するためのレスポンシブ対応が必要な場合は料金が高くなります。
バックエンド(DB構築+システム開発)
ポータルサイトの核になるシステム側の開発です。
量産型のサイトであればパッケージなどを使用して費用を抑えることができますが、独自の開発が必要な場合は開発費が大きくかかる部分です。
サーバー構築/設定、SSL設定など
レンタルサーバーで十分な場合もありますが、高度な技術が必要なポータルサイトになると専用サーバーやVPSが必要になります。
サーバーにソフトをインストールするなどの設定をします。
※上記の項目は別け方の一例なので、弊社の見積もり項目とも異なります
また設計やテストに関する費用は、項目を別けて金額を出すこともありますが、小~中規模のサイトではどこかの項目に入れ込んでしまうこともあります。
項目として入っていないものは基本的に対応外になりますが、中には厳密に区切れない内容だったり、お打ち合わせの範囲で全てを伝えることは難しかったりして、制作側も一般的な範囲を決め、ある程度見込んで対応するものもあります。
(例:SEOに関するタグなど)
発注される側に正確な知識がないと対応範囲が曖昧になることが多く、してほしいことが予算内に含まれていないということもあるので、やってくれるだろうと楽観的にみないでちゃんと確認することが大切です。
見積もり例
相場を算出するためのサンプルとして、飲食店のポータルサイトを例に考えてみましょう。
最小パターン構成のサンプル
まずはできるだけシンプルな構成の場合を参考にしてみます。
仕様
- 飲食店情報を入力して表示できるサイト
- 入力するのは運営者側だけ(ユーザーは飲食店の入力しない)
- 口コミ機能なし
- システムなしの説明ページ1ページ
- レスポンシブ対応あり
- レンタルサーバー運用
弊社での見積もりイメージ
- ディレクション 10
- デザイン制作 15
- フロントエンド(HTML+CSS+JavaScript) 25
- バックエンド(DB構築+システム開発) 50
- サーバー構築/設定、SSL設定など 0
上記の例では、かなりざっくりしていますが、一から独自開発する場合約100万円程度が相場となるでしょう。
関わるスタッフは、ディレクター・デザイナー・フロントエンドエンジニア・プログラマーの4種、1人で複数こなしたり、逆にプログラマー2人以上が付くこともあります。
上記の例では100万円の案件(1~2人月)を3~4人でこなすことになりますが、要件定義など順番に進めていきクライアントからのフィードバックも必要なので、開発期間が3分の1になったりはせず大体2ヶ月程度かかることが多いと思います。
開発の流れ
要件定義(ディレクター)
↓
デザイン(デザイナー)
↓
フロントエンド開発(フロントエンドエンジニア)
バックエンド開発(プログラマー)
↓
動作確認(それぞれ)
↓
納品
最近では、シンプルなサイトの場合、システムがすでに完成しているOSS(オープンソースソフトウェア)のWordPressを活用する事例も増えてきました。
その場合は、デザインの作りこみ、システムのカスタマイズなどにもよりますが、20~30万円ほど値段を下げることが可能な場合もあります。
一からの独自開発、WordPressなどのOSSを使った開発、どちらも一長一短で向き不向きがあるので、興味がある場合は、経験のあるホームページ制作会社に問い合わせるのがよいでしょう。
最大パターン構成のイメージ
飲食店ポータルサイトで最大規模のものといえば、やはりご存知「食べログ」でしょう。
食べログ – https://tabelog.com/
仕様(一部)
- ユーザーが誰でも会員登録して飲食店情報を入力できる
- 充実した店舗情報(メニュー・写真・クーポンなど)
- 口コミ機能(不適切な内容への対応なども含む)
- 充実した検索(駅・ジャンル・地図・現在地検索など)
- 予約機能
- 広告機能
- 特集ページ多数
- 非レスポンシブ(PC/スマホ別ページ)
- サーバー:クラウドサービス
一つ一つの機能に値段をつけていくのも難しいので、同業者から見た大雑把な予想でしかありませんが、単純に今の時点で食べログに実装されている機能だけでも数千万円は下らないでしょう。実際には改修・改善やコンテンツの拡充などで億の予算は掛かっていると思います。
ときどき「食べログのようなサイトを作りたい。いくらかかりますか?」と聞かれることがあります。
その方が食べログのどこまでを想定しているかわかりませんが、やはり数百万円では無理で、数千万円はかかりますし、当社で1年以内にあそこまでのサイトを作るのは不可能です、と伝えます。
実際は機能だけでなく、長年続けてきた運営経験・ノウハウがあったうえでの現在の食べログなので、仮に同じ開発費をかけて同じサイトを作ったとしても、まともに運営できるようになるには時間がかかるでしょう。
もし食べログと同等のサイトを、数百万円、数ヶ月で作れます、という制作会社がいた場合は、注意深く要件を確認した方がいいかもしれません。
見積もりが制作会社によって違う理由
ポータルサイトのお見積りはその仕様によって全く異なるので、相場がいくらとは言えないのですが、何社かに見積もってもらった場合に値段に差がある場合には、その理由をよく考えてみましょう。
なぜ値段に差が出るかというと、要件を決める段階で、発注側と受注側で思い描いているものが違うことが原因です。
発注者が考えているものが完璧に見積もり担当者に伝わることは難しく、さらに発注する側も依頼する段階では曖昧なイメージしか持っていないこともあったり、実際にポータルサイトとして落とし込むには、見積もり担当者の知識や経験により多くの部分を補完する必要があります。
そこで制作会社ごとの担当者の経験により、見えている最低ラインが違うので、補完するボリュームも変わり、結果として金額が大きく開くことになります。
また突然の仕様変更などのリスクを避けるために、リスクマージンをとることもあります。
この辺りは、発注者の要求が曖昧だと、安全のため大きめに取られる可能性があります。
高すぎる場合の注意点
「高すぎる場合の注意点?高いんだから頼むわけないし必要ない」
そう考えるのが自然かもしれませんが、念のため注意点を挙げてみましょう。
まず値段が高い理由は以下の3つが考えられます。
実は想定しているより高機能
発注するときの要求が曖昧で、制作会社の開発経験から運用するのに必要な機能を付けて見積もりされるパターン。
発注する側は表面的な部分を思い描いて要求をだしますが、実際には裏で複雑な仕組みが必要なことも多いです。
見積もりの時点で、その裏の部分を想定できているかいないかで見積もり金額が大きく変わることがあります。
その制作会社にとって初めての開発になるため高コスト化
前述した「人月」商売のデメリットでもありますが、同じものを作る場合でも、開発した経験があるのとないのでは、開発期間に差が生まれます。
開発経験がない制作会社の場合、工数が正確に読めないのでリスクマージンも含めて、見積もりが高額化するパターン。
緩く見積もって逆に安くなるケースもありますが、バグなど不具合が発生しやすいのでおすすめはできません。
しかし昨今技術の発展がすさまじく、すべてを経験している製作会社から選ぶというのも難しいのが現状です。
単純に成果物より見積もりが高い
定価がないので制作会社によって金額がブレるのは上にも書いたとおりですが、それに加えて間に営業ブローカー的な人が挟まっているパターン。
実際に開発者に回る予算が少なくなるため成果物のクオリティが低くなってしまうことがあります。
完全に見極めることは難しいですが、仕様の確認と見積もりの理由を聞いて納得ができるかどうかで判断していくのがよいでしょう。
安すぎる場合の注意点
逆に安い場合は「ラッキー」と思いがちですが、思わぬ落とし穴があるので、こちらも注意点を挙げてみましょう。
値段が安い場合の3つの理由。
開発経験が豊富で量産化する仕組みができている
すでに量産化できる状態になっており、納期も早く高性能な機能を享受できるパターン。
安くて安定性があり一番うれしいケースです。
細かい注意点としては、安い理由として既に完成されたシステムを使っていると、後からの仕様変更やカスタマイズが難しい場合があります。
見積もりが不正確
開発経験が少なかったり、そもそも開発できる技術がないのに見積もりをだしてしまうパターン。
見積もりに含まれていると思っていた機能も別途請求されたり、途中でお手上げをされてしまう場合も。
実績や経験を積むためにあえて安くして受注率を上げる
発注側にネームバリューがあったり、制作会社が今後のためになると思い受注するために見積もりを安く出すパターン。
見積もりが極端に安い場合も、疑問に思ったら他社との見積もりを引き合いにだすなどして、なぜこの金額なのかを確かめてみると失敗が少なくなると思います。
ポータルサイトの制作は意外と大変
前述の食べログのように、よく〇〇みたいなサイトを作りたいと、声をかけていただくことがありますが、ポータルサイトの制作、特に「既に事業として成立している大規模なサイト」を目指して開発するのは、想像よりも大変です。
通常のサイト制作を一軒家の建築と例えると、
簡易的なポータルサイトはアパート、
一般的なポータルサイトは低層マンション、
大規模なポータルサイトは高層マンション、くらいの違いがあります。
下手をすると、増築を繰り返すサグラダ・ファミリアになるかもしれません。
材料も必要なく、座って仕事をしているだけなので、簡単にできそうと印象を持たれる場合も多いですが、どんなサイトでも簡単に作業が終わることはほとんどありませんし、規模が大きくなるとより難易度も上がります。
要望をすべて伝えるとお見積りは高くなりがちですが、費用を安く抑える方法を聞いたら相談に乗ってくれるところもあるでしょう。
高い料金を払っているのにしょぼいサイトができた、良かれと思い安い金額で仕事を受けたら無理難題を言われてデスマになった、など制作するうえでのトラブルは後を絶ちませんが、発注する側も受注する側もお見積りの相場や、料金の理由を明確にして、気持ちよく取引ができるようになればいいですね。